大腸がんは高齢者だけの病気ではない

Bowel Cancer is not a old person's disease

Fran (left) and Akiko (right) were both unaware about bowel cancer occurring in the younger population. Source: Francesca Dove/Akiko Tomita

高齢者の病気であると思われがちな大腸がん。しかし、近年オーストラリアでは大腸がん診断を受ける1割が50代以下であり、その発症例が増えていると言われています。冨田明子さん、そしてフラン・ダヴさんもその一人でした。


日本人がかかる癌の第1位、「大腸がん」。オーストラリアでも、男女合わせて3番目に多い癌と言われています。

オーストラリアでは大腸がんの診断を受ける9割が、50歳以上を占める一方で、近年発症率が増えている50歳以下の大腸がんに注目が集まっています。
シドニー在住の冨田明子さんが大腸がんの診断を受けたのは47歳のときでした。

若い頃から貧血気味であったものの、その他の自覚症状はなく、ある日突然見舞われた腹痛で救急科を訪れると、腸に塊がみつかり、緊急手術。その後ステージ3の大腸がんと診断されました。
Akiko Tomita Bowel Cancer
Akiko presented herself to the emergency late last year with a severe abdominal pain. She thought it was her appendix, but it was in fact a tumour. Source: Akiko Tomita
「大腸がんの症状に貧血があることを知らなかったし、あまり知られていないと思うんです。それで見落としていました」

日本大腸がん研究会の杉原健一会長によると、大腸がんの初期症状は大腸のどこに、どの程度の腫瘍ができるかによって異なると言います。

直腸癌の場合、初期症状には、便中に出血が見られる一方で、S状結腸癌の場合、排便が2-3日おきになったり、便が水っぽくなったりと、便通異常が見られるようになります。さらに横行結腸や上行結腸など、大腸の奥へと進むと、症状がなかなかなく、貧血やしこりによって異常に気づく場合もあると言います。

フラン・ダヴさんが大腸がんと診断を受けたのは38歳の頃でした。

人一倍健康的なライフスタイルを送ってきたフランさんは、診断を受ける1週間前には15㎞のウォーキングをするなど、とてもアクティブな生活を送っていました。
Francesca Dove Bowel Cancer Survivor
Fran lived a healthy and active lifestyle right up to the point of her bowel cancer diagnosis  Source: Francesca Dove
彼女が体の異変に気づいたのは診断の約8ヵ月前。医者を訪れ、検査を勧められていた一方で、その重要性や緊急性を感じず、検査キットをバスルームのキャビネットに入れたまま、ホリデーへ出かけたり、新しいビジネスを始めたり、通常の生活を送っていたと言います。しかし、しばらくして、夜になると激しい腹痛に見舞われたフランさん。その後ステージ3の大腸がんと診断されました。

「テレビの宣伝で、50歳以上を対象にした検診について見たことはありましたが、当時の私は、パップテストや乳がんチェックの方が気になっていました。正直なところ、大腸がんについては何も知りませんでした」

高齢者の病気であると思われがちな大腸がん。フランさんの医師もはじめは寄生虫や細菌、ウイルスなど、大腸がん以外のことを疑ったと言います。

大腸がんの症状の多くは、ほかの病気でも見られるため、軽視されたり、「若いと医者から取り扱ってもらえない場合もある」と、冨田さんは語ります。

オーストラリアでは政府による大腸がん検診を50歳から無料で受けることができます。

50歳の誕生日が近くなると、政府からまず検診の案内状が届き、同意すると後日、自宅に直接検査キットが郵送されてきます。
案内は22の言語に翻訳されている一方で、残念ながら日本語はありません。NSW保健省によると、これは2006年の国勢調査をベースに、検査対象となる50~74歳が最も多く、また英語力が低いコミュニティを選択しているからだそうです。翻訳サービスが必要な方は131450にかけることで、日本語で情報を得ることができます。

一方で、この検診で便から血液が検出された場合必要となる大腸内視鏡(コロノスコピー)については政府は日本語の資料を提供しています。

しかし、50歳からという検診のスタート時期により、若者たちにおける大腸がんの知識が欠けていると、40年以上の経歴を持つ大腸がんの専門医、グラム・ニューステッド博士は述べています。
Colorectal Surgeon Associate Professor Graham Newstead
Colorectal Surgeon with over 40 years of experience, says more young people needs to be educated about bowel cancer Source: Bowel Cancer Australia
「GPを教育し、出血をしっかりと診断すること、そしてそれがたいしたことはないと見過ごさないよう若者たちを教育すること」も重要だと言います。

大腸がんオーストラリアでは2018年により、大腸がん検診のスタート時期を現在の50歳から45歳に早めようという動きが高まっています。アメリカでも先月初めて、米国予防医学専門委員会(USPSTF)が、検査開始年齢を50歳から45歳に引き下げることを推奨しました。
オーストラリア癌協会のエレノーラ・フェレット博士は、国内の大腸がん検診プログラムを再評価するためのエビデンスを検討することに前向きです。

「(オーストラリアの大腸がん検診)プログラムを分析した結果、50歳から74歳の人が2年に一度検診を行うことが最も効率的です。しかし、今後エビデンスが増えれば再検討し、連邦政府にも提言を行います」

しかし、今強化すべき点は、現在の検査対象となる人口がしっかりと検診を受けることだとフェレット博士は述べています。
Dr Eleonora Feletto Cancer Council Australia
Source: Eleonora Feletto
現在の検査参加率は10人に4人と、半数を切っており、これを10人に6人に増やすことで8万4000人の命を救うことができるとフェレット博士は説明します。

「早く見つけて取り除けば、予防になり、治療の必要はありません。だかこそ、検診に同意し実行することが非常に重要なのです」とニューステッド博士も言います。

日本では大腸がん検診は40歳からとなっています。杉原会長によると、これは検診による経済効率が関係しているからであり、オーストラリアに暮らす日本人は、自ら異常を感じない限り、オーストラリアのプログラムに従い、50歳から検診を受けるべきであるとしています。

オーストラリア癌協会のフェレット博士によると、大腸がんは改善できる要素と関連した癌だと言います。例えば、食生活では食物繊維を多くとることや、赤肉や加工肉、アルコールを減らすこと、そしてあまりよく知られていませんが、喫煙を控えることで大腸がんのリスクを減らすことができます。

「オーストラリアでは大腸がんと診断されるその50%がこれらの生活習慣を改善することで防ぐことができます」

杉原会長も「昔ながらの日本人の食生活」を勧めています。

現在治療中の冨田さんは、病気のことを隠すことなく、積極的に自身の癌について周りの友人などに語り、前向き過ごしています。

「一人で隠れて治療するとつらくなるので、オープンにして、みんなに助けてもらおうと思いました」

そして何よりも、自分の経験を通じて少しでも多くの人が大腸がんについて意識してほしいと語ります。

「自分の体をよく理解して、ちょっとおかしいなと思ったら自ら検査を受けてほしいです」
大腸癌について詳しく知りたい方は下記からどうぞ:

Bowel Cancer Australia 

Cancer Council of Australia 

National Bowel Cancer Screening Program
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