日本人臨床心理士に聞きました 家族と上手に付き合うロックダウン

Japanese psychologist Shiori Yano

Founder of Sydney Cocoro Clinic, Shiori Yano is a qualified psychologist in Japan and Australia. Source: Shiori Yano

長期化するロックダウンや規制により、増加している家族間のストレス。シドニーこころクリニックの日本人臨床心理士、やの しおりさんに、ロックダウンやリモート学習との上手な付き合い方を伺いました。


新型コロナウイルスデルタ株の流行により、大きく変わってしまった日常。

とくにロックダウンが長期化するシドニーやメルボン、キャンベラでは、リモート学習にリモートワークと、家族間のストレスも増加し、「ロックダウン・ファティーグ(疲労)」という言葉をよく耳にするようになりました。

シドニーこころクリニックの臨床心理士であるやの しおりさんによると、ロックダウン開始から3-4週間頃からしんどさを訴える人が多くなり、特に自宅勤務中にリモート学習を見なければならない状況や、1日中家族と過ごす環境に、煮詰まっているという相談が増加しています。

勉強をつきっきりで見る必要がある幼い子供がいる家庭や、英語での勉強を苦痛に感じる親、ネイティブの配偶者に任せてしまっている家庭など、家族内の緊張感が増しがちになっていると語ります。
Father working from home with his kids
Father working from home with his kids. Source: Getty Images/Marko Geber
では子供たち、そして子供たちを支える家族は、どのようにこのストレスと付き合えばよいでしょうか。

1日を構造化する

「子供たちと話し合って、スケジュール表を作ると良いと思います。朝ごはんを食べたらまず30分は外を歩く、帰宅したらこの作業、お昼を食べたら何時までこの作業、そのあと何時から何時まで公園に行くなど」

夜には、1日をスケジュール通りにできたかどうかを判定し、ステッカーなどを貼り、10個たまったらご褒美などといったルールも勧めています。

またメリハリがない日々によって、「曜日がわからなくなる」といった状況に対しては、昔から船乗りや自衛隊が行ってきた「金曜日の夕食にはカレー」といったルールを家庭内で決めたり、週末には規制内でできる、ブッシュウォーキングやビーチウォーキングなど、いつもとは違ったアクティビティをすることなどを提案しています。
Lockdown weekend activity
Make weekends actually feel like a weekend by doing special family activities Source: Getty Images/FatCamera
この他にもテイクアウェイやデリバリーなど、小さな楽しみを作ったり、「いまこんなに時間があるから」、掃除や断捨離、勉強が進んだり、家族との時間がたっぷり持てるなど、「良い面を意識し、感謝するようにする、ポジティブ・シンキングが重要」だと言います。

また保護者自身も、自分のメンタルヘルスに気をとめ、休息をとったり、「大変な中よくやっている、煮詰まってもしょうがない」など自分の感情や状況を理解して、「自分で自分に共感してあげる」ことが大切です。

遊びを通じて子供のストレスや不安を探る

一方で、大人のように自分の感情を理解して、表現することが難しい子供の中には、その悩みを「身体化する」、つまり疲労、やる気の低下、腹痛、下痢など、「具合が悪くなることで表現する」ことが多いと言います。

この場合、「学校も行けないし、なんだかすっきりしないのかな?」など、子供の気持ちを推し量る共感的な声をかけたり、一緒に絵を描いて、その中で子供の気持ちの象徴的な表現を感じとると言ったことをやのさんは提案しています。
Children mental health art therapy
Drawing together with your child can be a way to understand and communicate about worries and stress. Source: Getty Images/skynesher
「絵のストーリーについて話し合ったり、応答的な絵を親が描いたり。子供自身にその続きの絵や、解決の絵を描いてもらうなどといったようなアートセラピー的なやり方も役に立つのではないかと思います」

メンタルヘルスのため日頃から心がけるべき10のポイト

  1. 毎日、または1日おきくらいの十分な運動。45分から1時間の有酸素運動で脳をよく刺激して、セロトニンを十分に出す
  2. 1日を構造化する
  3. 毎日同じルーティンばかりでなく、いつもと違うことをしてみるなど、変化をつけて気分を変える
  4. 飲酒習慣に頼り過ぎない
  5. 何かいつもと違うものを食べるなど小さな楽しみを作る
  6. 家にこもりきりにならず、制限内の散歩や買い物に行くなど、1〜2日に1回はちゃんと外に出る
  7. 日の光を浴びる。得に朝、すっきり起きるために
  8. あたたかいお風呂やシャワーに入るのも、セロトニンを増やすのに効果的
  9. ロックダウンでもかえって得ていることを考えたり、感謝できることを考える
  10. 自分の気持ちをよくとらえ、その理由について考え、自分で自分によく共感する
専門家に相談する

悩み事や不安を抱えていても、初めての人はカウンセリングへ「行きたくない」と思う人も少なくありません。やのさんは、以下のような状況である場合は、サイコロジストに問い合わせて、相性が合いそうかどうかを確かめたり、かかりつけのGPに適当な専門家を紹介してもらうことを勧めています。

  • 気分ややる気の落ち込みが数日間では治らず、2週間以上続いているとき

  • 友だちと話すなど、何か楽しいことをしていても気分が変わらないことが一定期間以上続くとき

  • 話したり相談できる人があまりいなくて、コミュニケーション不足。孤独感を感じ自分一人で煮詰まりすぎると思うとき

  • 自傷行為など自分を傷つけてしまいそうなとき

オーストラリアでは先にGPの紹介があれば、メディケアのみならず、ワーホリや留学生の海外旅行保険、学生保険で、心理カウンセリング費用がカバーされます。またパンデミックの中、少なくても年内までは電話やオンラインでの心理カウンセリング、「テリヘルス」も、ほとんどの心理カウンセリングに導入されています。
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